日本透析医学会雑誌
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症例報告
人工血管移植術後に溶血性貧血をきたした透析患者の1例
上田 美緒春口 洋昭田中 好子小島 史子柿沼 多恵子鈴木 基文新田 孝作秋葉 隆
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2009 年 42 巻 5 号 p. 387-391

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抄録

症例は65歳女性.1983年血液透析導入(原疾患不明).1991年生体腎移植.2001年血液透析再導入.2007年7月右前腕内シャント閉塞にて左前腕人工血管(グラシル®)移植術施行.手術時出血量は50mL以下で多くはなかった.が,術後10日目Hb 10.7g/dLから7.7 g/dLと貧血の進行を認めた.エリスロポエチン(EPO)製剤増量,鉄剤投与で一時,貧血改善するも50日目頃から再び貧血進行.術後90日頃Hb 6.6 g/dLまで低下.AST 43IU/L,LDH 974IU/L,ハプトグロビン3mg/dL低値と溶血所見を認めた.クームス,寒冷凝集素は陰性.グラフト部のエコー,血管造影検査にて上腕動脈のグラフト吻合部から橈骨動脈,尺骨動脈分岐部まで内膜の解離と偽腔への血流を確認した.貧血に対し輸血計4単位施行.その後溶血所見の軽減と3か月半頃からはEPO製剤投与のみで貧血が改善した.動脈解離は残存しているが術後1年経過しても溶血性貧血の再発はない.

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© 2009 一般社団法人 日本透析医学会
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