日本透析医学会雑誌
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原著
血液透析施設におけるウイルス性肝炎に対する院内感染防止対策の現況
安藤 亮一秋葉 隆
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2009 年 42 巻 6 号 p. 423-433

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抄録

2000年に続いて,2006年に透析施設におけるウイルス性肝炎の感染の現況を把握し,院内感染防止の実態を明らかにするためにアンケート調査を行った.1,817施設から回答があり,回答率は50.63%であった.HBs抗原陽性率(2.39%),HCV抗体陽性率(11.27%)はいずれも2000年より低下していた.感染対策委員会,感染対策マニュアルの整備など感染防止体制は,2000年よりも高率に認められた.HCV抗体陽性患者は67.3%で決められたブロックあるいはベッド固定がなされ,11.3%でスタッフ固定がなされ,いずれも2000年よりも増加した.エリスロポエチンの複数患者への分割投与,使用済み注射器の再使用,余った返血用生食の別患者への使用など院内感染の原因となり得る処置はいずれも減少したが,根絶されてはいず,さらに徹底した対策が必要と考えられた.エリスロポエチンのプレフィルドシリンジは94.9%と普及率が高かったが,ヘパリンのプレフィルドシリンジの普及率は27.1%にとどまっていた.透析操作終了時に手袋をする施設のほうがしない施設よりHBs抗原,HCV抗体陽性率が有意に低く,HCV抗体陽性患者にHCV抗体陽性を伝えている施設およびHCV抗体陽性患者への感染予防のための日常生活の注意をしている施設でHCV抗体陽性率が有意に低かった.肝炎ウイルス陽性患者の定期的な画像検査は,80%の施設で定期的に行われていたが,肝臓専門医での診察は25.3%にとどまった.ウイルス性肝炎に対する治療は39.6%の施設で行われていたが,インターフェロンなどの抗ウイルス療法は少なかった.以上より,ウイルス性肝炎に対する院内感染防止対策は,2000年より改善が認められたが,改善する余地が残っている.また,透析患者のウイルス性肝炎の診療は十分とはいえず,今後,透析患者のウイルス性肝炎の診療ガイドラインの策定が望まれる.

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© 2009 一般社団法人 日本透析医学会
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