日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
原著
透析患者の皮膚掻痒症に対する塩酸フェキソフェナジンの有効性の検討
―かゆみとQOL―
斎藤 修草野 英二戸澤 亮子伊澤 佐世子斎藤 孝子武藤 重明村山 直樹目黒 輝雄奥田 康輔下山 博身四宮 俊彦金 成洙廣瀬 悟黒川 仁
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 42 巻 7 号 p. 507-514

詳細
抄録

血液透析患者における皮膚掻痒症は患者のQOL(quality of life)を低下させる合併症の一つであり,現在のところ主として抗ヒスタミン薬が皮膚掻痒症の治療に用いられている.今回,われわれは塩酸フェキソフェナジンを血液透析患者に投与し,透析患者の皮膚掻痒症に対する有効性を自覚症状に加えてQOLならびに睡眠の面からも併せて検討した.VAS(visual analogue scale)スコアで40以上の掻痒を訴える80例の維持血液透析患者が登録され,77例を解析対象とした.塩酸フェキソフェナジン60 mgを1日2回朝夕食後8週間経口投与し,自覚症状,QOL,睡眠障害ならびに日中の眠気の評価を2,4,8週間後に実施した.かゆみの自覚症状はVASを用いて評価し,QOLはSkindex 29を用いて評価した.塩酸フェキソフェナジンの投与開始2週間後には,かゆみの強さ,範囲,頻度のいずれも投与開始前に比して有意に改善軽快し(p<0.001),8週まで連続して有意な改善を認めた.また,Skindex 29のいずれのスコアも投与開始後には投与開始前に比して有意に低下し(p<0.001),QOLの改善がみられた.夜間の睡眠障害は塩酸フェキソフェナジンの投与により有意に改善され(p<0.001),その結果,日中の眠気も有意に改善された(p<0.001).また重篤な有害事象は認められなかった.以上の結果より塩酸フェキソフェナジンは2週間の投与でも掻痒症状・QOLおよび睡眠障害の有意な改善効果を認め,その効果は継続投与でさらに8週まで改善がみられた.塩酸フェキソフェナジンは安全性も高く,血液透析患者の皮膚掻痒症に有用であることが示唆された.

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top