日本透析医学会雑誌
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症例報告
肺ムーコル症を合併した血液透析患者の剖検例
森戸 卓塚田 三佐緒種田 積子秋葉 隆新田 孝作
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2010 年 43 巻 1 号 p. 71-76

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抄録

55歳,男性.46歳時に糖尿病性腎症による慢性腎不全にて血液透析を導入された.2008年2月,呼吸不全のため入院し,間質性肺炎の急性増悪の診断にてステロイドパルス療法を施行された.軽快と増悪を繰り返していたが,呼吸不全が再増悪し,第15病日に挿管,人工呼吸管理された.間質性肺炎,感染の両面から集学的治療を行っていたが,改善がみられなかった.第21病日に気管鏡にて採取した痰の培養でムーコル属であるRhizopus sp. が検出され,肺ムーコル(接合菌)症と診断された.アムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)を投与されたが,翌日に永眠された.剖検所見では,肺動静脈に真菌状の血栓を多数認め,ムーコル症による呼吸不全が死因と考えられた.ムーコル症は,各種培養でも検出されることは稀で,また,β-D-グルカンも陰性のため,診断は一般に困難である.また,急速に病状が進行するため,治療が奏効する例は極めて少ない.末期腎不全患者で,抗生剤不応の感染症,β-D-グルカン陰性,かつ,侵襲性真菌感染症が疑われる症例においては,接合菌症の可能性も念頭にいれ,早期に接合菌に感受性を持つ抗真菌剤を開始すべきと考えられた.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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