日本透析医学会雑誌
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症例報告
Collagenous colitisを合併した血液透析患者の1例
若杉 三奈子市川 紘将本間 照若木 邦彦本間 則行
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2010 年 43 巻 12 号 p. 999-1003

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抄録

症例は83歳,女性.83歳から慢性腎不全のため,血液透析を導入.透析導入時の血液検査で,高ガンマグロブリン血症と抗核抗体320倍を認めたが,その他自己免疫疾患を示唆する所見は認めなかった.また,慢性腎不全の原疾患は不明であった.週3回の外来血液透析を継続中,平成20年6月末から水様性下痢(5~6行/日)が出現.整腸剤,塩酸ロペラミド,バンコマイシンなどの内服を行ったが,下痢は慢性再発性に出現を繰り返していた.下痢に伴う低アルブミン血症,浮腫を認めた.それまで服用していたランソプラゾールを塩酸ラニチジンに変更したが,下痢は出現を繰り返し,大腸内視鏡検査を行った.肉眼では異常所見を認めずほぼ正常の粘膜所見であり,横行結腸からの粘膜生検で粘膜表層部上皮直下にエオシン好性で,マッソントリクローム染色では25~35μm幅の沈着物を帯状に認め,粘膜固有層全層に小型リンパ球,形質細胞といった慢性炎症性細胞浸潤に加え,好酸球浸潤が目立ち,collagenous colitisと診断した.塩酸ラニチジンを中止後,下痢は消失し,低アルブミン血症も徐々に改善した.Collagenous colitisは1976年にLindstromによって報告され,慢性水様性下痢,肉眼的にほぼ正常な大腸所見,特徴的組織所見を有する臨床的症候群である.欧米では数百例の報告があり,慢性水様性下痢の原因として決して稀ではないと報告されている.本邦での報告例はまだ少ないが,年々増加傾向にある.病因は不明だが,自己免疫や薬剤の関与などが考えられている.本例も薬剤中止後に下痢が消失したことから,その関与が考えられた.透析患者での報告はまだないが,慢性下痢の鑑別疾患の一つとして念頭に置くことが必要と考え,報告した.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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