日本透析医学会雑誌
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原著
手の衛生手技は透析液の清浄化に不可欠である
本田 和美井上 有紀大薗 英一市村 恭子野呂瀬 嘉彦高橋 秀実葉山 修陽
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2010 年 43 巻 4 号 p. 361-366

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抄録

透析液清浄化対策として,透析液製造系の改良や洗浄消毒など汚染後の改善策に関する報告は多数みられるが,その汚染源に関する検討は少ない.われわれは,製造管理として清潔操作を取り入れた標準的操作マニュアル(SOP)に従って日常の透析液作製を行い,メンテナンスなど非日常的な製造系への侵襲は作業内容を逐次記録した.さらに,品質管理として透析用水・透析液のエンドトキシン活性(週2回)および生菌数(月1~2回)を経時的に観察し,製造系の汚染源を検討した.2004年8月~2007年12月の観察期間中,エンドトキシンリテンティブフィルタ(ETRF)以後の透析液のエンドトキシン活性・生菌数は常に検出感度未満であった.しかし,ETRFより手前のバイオバーデン部では検出感度未満から100 EU/L,580 CFU/mLまで上昇した.この変動とメンテナンスとの関連をみた.衛生的手洗いと清潔な手袋着用など手の衛生手技が行われていなかった場合,事後洗浄を行ったとしても,エンドトキシン活性は17.7±15.3から20.6±20.8 EU/Lへ有意に上昇したのに対し,適切に手の衛生手技が行われた場合には変動は認められなかった.メンテナンスにより透析液の汚染が生じることが明らかとなり,製造系の汚染原因として重要であると考えられた.

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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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