日本透析医学会雑誌
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症例報告
エンドトキシン吸着と持続的血液透析濾過が奏効した特発性胃破裂後敗血症性ショックの6歳小児例
長谷川 浩一小山 雅之小原 史生岩井 崇秋山 有史池田 健雲母 公貴鈴木 勝雄
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2011 年 44 巻 1 号 p. 73-78

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抄録

症例は6歳,男児.平成19年6月26日,昼食後から上腹部痛と嘔吐が出現.翌27日には腹部膨満も現れたため近医を受診後,当院小児科を紹介となり精査・加療目的に入院となった.高熱と頻呼吸を伴うショック状態であったためICUへ入室となった.腹部CTにおいて多量のfree airと腹水,胃・十二指腸・小腸の拡張を認めたため上部消化管の穿孔と考え緊急開腹手術となった.胃上部大彎後壁側の破裂と食物残渣を伴った腹水が認められたため胃破裂による腹膜炎と診断し,破裂部を含む部分胃切除を行った.術後はdopamine(DOA)8μg/kg/min投与下でも収縮期血圧が60mmHg台と敗血症性ショックの状態であったことからエンドトキシン吸着(PMX)を施行した.PMX開始後より血圧は速やかに上昇し2時間後には136/70mmHgまで改善した.PMX終了後,持続的血液透析濾過(CHDF)に移行し十分な利尿も得られるようになり,3日後にはDOA,CHDFともに離脱.7月27日にはICUを退室し,12月22日に退院となった.特発性胃破裂の学童期での発症は稀であり,さらに敗血症性ショックに至り血液浄化を行った症例はわれわれが検索した限り本邦では3例目であった.小児例であっても重篤な敗血症性ショックからの早期離脱・全身状態の早期改善をはかるためにPMXを含めた血液浄化療法の施行を検討すべきであると考えられた.

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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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