日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
症例報告
頭蓋内圧亢進症急性期に高張グリセロール併用頻回低効率短時間血液透析(frequent, low-efficient and short hemodialysis:FLESHD)が有用であった維持血液透析症例
岡田 一義阿部 雅紀水盛 邦彦小林 伸一郎佐々木 裕和鈴木 紘子谷口 真知子逸見 聖一朗北井 真貴鈴木 緑奈倉 千苗美池田 和也梶原 麻実子清水 千枝矢吹 美奈子松本 史郎伊藤 謙井下 篤司丸山 高史福家 吉伸藤田 宣是相馬 正義
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 44 巻 6 号 p. 581-587

詳細
抄録

脳卒中治療ガイドライン2009において,頭蓋内圧亢進症急性期の血液浄化療法として腹膜透析または持続的血液濾過(hemofiltration:HF)が推奨されているが,標準的な間欠的HFまたは連日短時間血液透析も実施されている.当院では,浸透圧と重炭酸イオン(bicarbonate:HCO3-)の変化をより少なくするために低効率HFを頻回に実施しており,今回,高張グリセロールを併用した頻回低効率短時間血液透析(frequent, low-efficient and short hemodialysis:FLESHD)の安全性を確認後,頭蓋内圧亢進症急性期にFLESHDが有用であった維持血液透析(HD)患者を経験したので報告する.頭蓋内圧亢進症の維持HD患者6名を対象とし,低効率HF(血流量200mL/分,補充液流量2.5L/時,補充液:HFソリタBW®,濾過膜APS-15SA®,治療時間4時間)を実施後に,低効率HD(血流量100mL/分,透析液流量500mL/分,透析液AKソリタDL®,透析膜APS-11SA®,治療時間2時間)に移行し,各種パラメーターを測定した.頭蓋内圧亢進症急性期の維持HD患者2名を対象とした.グリセオール® 400mLをHD中に投与し,透析液流量を300mL/分に低下させた低効率HD条件下で3日間連続のFLESHDを実施した.4回目のFLESHDからは,グリセオール®を投与せずに,徐々にHD条件を変更し,各種パラメーターを測定した.浸透圧は,低効率HF後(289.5±10.4 vs. 285.8±9.3mOsm/kg,p<0.01)と低効率HD後(294.5±16.3 vs. 290.2±12.7mOsm/kg,p<0.05)に有意に低下したが,HCO3-には有意差を認めなかった.なお,HF前とHD前およびHF後とHD後の比較では,浸透圧とHCO3-には有意差を認めなかった.2症例とも,3日間連続のFLESHD後には意識レベルは改善した.計6回のFLESHDでは,浸透圧はHD後に有意に上昇し(293.5±3.9 vs. 297.7±3.9mOsm/kg,p<0.05)たが,HCO3-はHD前後で有意差を認めなかった.症例2では,転院直前HD(血流量150mL/分,透析液流量500mL/分,治療時間2.5時間)前後での浸透圧とHCO3-の変化率は,-3.4%と-3.9%であった.高張グリセロール併用FLESHDは浸透圧およびHCO3-への影響は少なく,維持HD患者の頭蓋内圧亢進症急性期における安全で有用な血液浄化療法であると思われた.

著者関連情報
© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top