日本透析医学会雑誌
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症例報告
両側腕頭静脈狭窄症に対し経皮的血管形成術が奏功した1例
樋口 輝美水野 真理高崎 智也上田 寛朗石田 恵美子中島 葉子北村 卓也志村 暁人瀬戸口 晴美榎本 伸一北井 真希大川 恵里奈山崎 俊男知久 正明斎藤 穎安藤 英之
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2011 年 44 巻 6 号 p. 589-594

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抄録

症例は61歳,男性.糖尿病性腎症による末期慢性腎不全にて2005年3月より血液透析を導入され,同年4月に左前腕に橈骨動脈と橈側皮静脈による内シャントを作製された.その後他院にて維持血液透析を受けていたが,2007年7月頃より左上肢の浮腫が出現し,症状増悪したため,静脈高血圧症の診断にて2008年1月内シャント閉鎖術を施行され,同時に右前腕に新たに内シャントを作製された.その後,高度の顔面浮腫と右上肢の腫脹が出現し,シャント管理を含め2010年3月当院紹介転院となる.転院後,著しい顔面と上肢の腫脹を認め,頸部から前胸部にかけて高度の側副血行路の出現と,頭重感,鼻閉感などを訴えた.2010年4月右上肢の内シャントによる静脈高血圧症を疑い血管造影を施行したところ,右腕頭静脈に長さ約30mmの90~99%狭窄を認め,バルーン拡張術とステント留置術による経皮的血管形成術(PTA)を施行した.その後,顔面の腫脹と側副血行路の原因の一つとして左中心静脈の閉塞および狭窄も考慮し,左上肢からの静脈造影を施行したところ,左腕頭静脈にも長さ50mmの99%狭窄を認めたためバルーン拡張術とステント留置術によるPTAを施行した.その後顔面と上肢の腫脹は改善し,頭重感,鼻閉感等の臨床症状も消失した.両側腕頭静脈狭窄に対するPTAの報告は本症例が初めてであり,臨床的に有用な治療であると考えられた.

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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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