日本透析医学会雑誌
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症例報告
Alport症状を伴ったMay-Hegglin異常症の1透析導入例
渋谷 純木谷 茜黒田 達実
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2011 年 44 巻 8 号 p. 689-694

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抄録

May-Hegglin anomaly(MHA)は血小板減少,巨大血小板,顆粒球封入体を三徴とする,まれな常染色体優性遺伝性疾患であり,原因として非筋肉性A型ミオシン重鎖(myosin IIA)をコードする遺伝子である,MYH9の異常が指摘されている.さらにMYH9の異常がAlport症状(感音性難聴,白内障,腎炎)の発現に重要な役割を担っているものと考えられている.症例は45歳,女性.2007年6月より全身倦怠感,頻回の嘔吐を主訴として入院となった.胃内視鏡検査では潰瘍の所見はなくマロリーワイス症候群と診断され止血処置が施行された.末梢血のMay-Giemsa染色では血小板減少,巨大血小板,顆粒球封入体を認めた.血液生化学では著明なクレアチニンの上昇を認め血液透析治療を開始した.子供は4歳時にMHAと診断されたが遺伝子診断はされていない.父親は血液透析治療を受けていたが46歳で亡くなっていた.聴力検査では両側で高音領域の感音性難聴を認め眼科受診では両側の白内障が観察された.遺伝子検査ではMYH9のエクソン38領域を増幅し,その塩基配列を解析したところヘテロ接合性のE1841Kの変異を認めた.また顆粒球の免疫蛍光染色では細胞質にmyosin IIAが紡錘状に異常集積していた.以上のデータより本症例をAlport症状を伴ったMHAと診断した.

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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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