日本透析医学会雑誌
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症例報告
活性型ビタミンD3外用剤により高カルシウム血症をきたし緊急血液透析を要した急性腎不全の1例
平山 尚名和 徹浪越 為八十倉 健彦下江 俊成坂口 孝作
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2011 年 45 巻 1 号 p. 63-68

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抄録

症例は60歳代,男性.2006年4月より尋常性乾癬に対し,合成レチノイド製剤(エトレチナート)内服と活性型ビタミンD3(以下VD3)外用剤(マキサカルシトール)を併用していた.2010年8月下旬より水様性下痢,食欲不振が出現し,ウイルス性腸炎の診断で近医で保存的加療を行われていた.その後,下痢症状は改善するも全身倦怠感が持続するため,近医より当科に紹介受診となった.来院時,尿素窒素(BUN)158.2mg/dL,血清クレアチニン(Cr)11.16mg/dL,カリウム(K)8.1mEq/L,重炭酸イオン(HCO3)15.6mmol/L,補正カルシウム(Ca)12.4mg/dLと急性腎不全,高K血症,代謝性アシドーシス,高Ca血症を認めたため入院,緊急血液透析を施行した.長期にわたりVD3外用剤を使用されていたことから,VD3外用剤による高Ca血症とそれに伴う急性腎不全と推察された.VD3外用剤と合成レチノイド製剤内服を中止し,計5回血液透析を実施後に離脱した.その後,腎機能はCr 2.46mg/dLまで改善し第58病日に退院となった.VD3外用剤の副作用として,高Ca血症と腎機能障害の報告例はいくつか認めるが,その多くは外用剤の中止と高Ca血症に対する治療で軽快しており,緊急血液透析を要した報告はない.今回,われわれはVD3外用剤の副作用によって,緊急血液透析を要した1例を経験したので報告する.

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© 2011 一般社団法人 日本透析医学会
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