日本透析医学会雑誌
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原著
血液透析患者に対するレボカルニチン補充療法
武内 操清原 実千代町田 博文武内 秀之
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2012 年 45 巻 10 号 p. 955-963

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抄録

当院の維持血液透析患者のうち,ダルベポエチンアルファ(DA)40 μg/週以上または遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(rHuEPO)9,000単位/週を投与中のESA低反応性貧血症例を対象に,1.透析年数と血中カルニチン濃度,2.レボカルニチン塩化物(エルカルチン®,以下LCと略)投与後のカルニチン血中濃度の推移と貧血改善効果,3.LCの透析関連筋肉症状に対する効果を検討した.1の対象患者は100例で,導入1年未満の血中カルニチン濃度は総カルニチン(TC)57.9±18.2 μmol/L,遊離カルニチン(FC)38.8±13.6 μmol/Lで,透析導入1年後にはTC 39.3±18.6 μmol/L,FC 25.0±12.5 μmol/Lと導入1年未満に比較し有意に(p<0.01)低下し,透析年数の経過とともに減少していた.2は1の患者のうち,透析導入6か月以上,かつ3か月間ESAの投与量の変更がない75例に対し,LCの内服希望者32例を投与群としLCを600 mg/日分2経口投与,43例を非投与群とし比較検討した.投与群では12週後にはTC 175.0±95.5 μmol/L,FC 122.3±64.6 μmol/Lと著明に上昇した.エリスロポエチン抵抗性指数(ERI:ESA投与量(単位/週)/Hb値(g/dL))は投与群では1,041から24週後737,非投与群では916から24週後825と,投与群で有意(p<0.01)に減少していた.3は2のLC投与群に対し,無力症(疲労・倦怠感),透析中の筋けいれん,透析中の低血圧,運動負荷後の呼吸困難の4項目について,LC内服前・12週後・24週後にアンケートによる看護師の聞き取り調査にて症状の改善を検討した.その結果,無力症と筋けいれんにおいて有意な改善が認められた(p<0.001).経過中,1例が貧血の悪化にて投与を中止,それ以外に有害事象は認めなかった.以上の結果から,ESA低反応性貧血や透析関連筋肉症状を有する透析患者に対するLCの投与は,治療の選択肢の一つとなり得ることが示唆された.

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© 2012 一般社団法人 日本透析医学会
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