日本透析医学会雑誌
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症例報告
難治性踵潰瘍に対し静脈バイパスグラフト併用遊離広背筋皮弁移植を行い救肢した維持血液透析患者の1例
成山 真一岩谷 博篤明渡 寛粕本 博臣本庄 桂子伊東 芳江櫻井 麻美中田 千鶴子茨木 愛弓山戸 由希金光 秀史中西 健
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2012 年 45 巻 10 号 p. 965-971

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抄録

維持血液透析患者の重症下肢虚血(CLI:critical limb ischemia)において,足部,下腿,大腿等の下肢切断は患者の活動性を著しく低下させるに留まらず,生命予後にも多大な悪影響を与えることが知られている.このためCLIに対する治療を行うにあたり,下肢切断を回避し歩行機能をできる限り温存させることが重要な課題となる.今回,われわれは維持血液透析患者に発症した組織欠損を伴う難治性踵潰瘍に対し,静脈バイパスグラフトを併用した遊離広背筋皮弁移植を行い,救肢できた1例を経験した.症例は,49歳男性,糖尿病性腎症由来の慢性腎不全のため2010年4月より当院で血液透析導入となった.2011年5月頃より右踵部に疼痛および皮膚潰瘍が出現した.さらに同部位に感染兆候もみられるようになったため入院となった.創部感染に対し抗生剤投与やデブリードマンを行ったが改善せず,皮膚潰瘍はさらに増悪し組織欠損を生じるに至った.このため同年8月に静脈バイパスグラフト併用遊離広背筋皮弁移植を行い救肢に至り,歩行機能も温存することができた.静脈バイパスグラフトと遊離皮弁移植を併用することは,血液透析患者におけるCLIに対する有効な治療選択肢の一つとなり得ることが示唆された.

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© 2012 一般社団法人 日本透析医学会
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