日本透析医学会雑誌
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症例報告
血液透析への導入を契機に発見された後天性血友病Aの1例
米森 雅也速見 浩士松下 良介大橋 保谷口 賢二郎牟田 裕美佐がた 芳久山田 保俊榎田 英樹中川 昌之
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2012 年 45 巻 6 号 p. 501-505

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抄録

症例は73歳,女性.高血圧,糖尿病,慢性関節リウマチ,慢性腎不全の診断にて前医で外来治療を受けていた.2007年6月から全身性の浮腫が増悪し,貧血の悪化と腎不全が進行したため前医に入院し,血液透析へ導入された.透析導入後のバスキュラーアクセスは両側大腿静脈の直接穿刺が施行されていたが,穿刺部である左大腿部に巨大な血腫が生じ,同時に左膝関節内出血と消化管出血が認められた.血液検査にて活性化部分トロンボプラスチン時間の延長,第VIII因子の低下が認められ,さらに抗第VIII因子抗体が39BU/mLと高値であったため,後天性血友病Aと診断された.当院に転院した後,バスキュラーアクセスカテーテルを右大腿静脈に留置し,週3回4時間の維持透析を継続した.出血性の症状に対する治療のために活性化プロトロンビン製剤を使用し,免疫学的療法として副腎皮質ホルモンの内服を開始した.出血傾向が改善した後,内シャント造設術を施行した.後天性血友病は徐々に改善し,内シャントの使用を開始した後,前医に転院した.血液透析を契機に後天性血友病が発見されるのはまれであり,血液透析や内シャント手術を実施するためにも,出血傾向をコントロールすることが重要であると考えられた.

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© 2012 一般社団法人 日本透析医学会
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