日本透析医学会雑誌
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総説
慢性腎臓病・透析患者のリスク層別化・予後評価における心筋脂肪酸代謝イメージングの有用性 : その基礎と臨床
中田 智明橋本 暁佳小原 史生吉原 真由美菅原 浩仁西沢 慶太郎
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2014 年 47 巻 1 号 p. 57-65

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抄録

 透析患者の予後は不良で, その主な原因は心不全, 脳血管障害, 心筋梗塞である. 心筋は大きなエネルギーを必要としているため, 脂肪酸に全エネルギー基質の約60%を依存している. 好気的条件で機能する脂肪酸β酸化は血流障害の影響を受けやすいため虚血性心筋傷害は心筋脂肪酸代謝イメージングによって鋭敏に検出可能である. 側鎖型長鎖脂肪酸であるI-123標識した [iodine-123-15-(p-iodophenyl)-3-(R, S)-methylpentadecanoic acid] (123I-BMIPP) を用いた心筋イメージングによってこの心筋脂肪酸代謝障害を画像化できる. 心筋虚血はミトコンドリアの脂肪酸β酸化とATP産生を減少させ, 心筋の脂肪酸利用能・貯蔵能の低下, 心筋摂取も停止するため心筋BMIPP集積は低下する. 本法は, 特に冠動脈疾患で最も有用性が高く, 日本循環器学会ガイドラインでも高い評価を受けている. 急性胸痛症候群・安定型狭心症あるいは負荷検査が困難な患者において, 診断・リスク層別化・予後評価で優れた適応がある. 高齢者・重症糖尿病・心不全・腎不全・低血圧・透析患者等で造影剤検査や負荷試験が禁忌もしくは施行困難な場合でも, 安静時に安全に施行できる. 比較的高度な急性虚血発作や慢性虚血では心筋脂肪酸代謝障害が持続するため, 安静時の心筋血流は正常でも心筋BMIPP集積は異常をきたす (虚血メモリー). これは, 生存心筋における脂肪酸代謝障害・ATP産生障害を意味し, 局所心機能障害と関連している. またこのような異常が透析患者の心血管事故・生命予後と関連することが多施設共同研究にて証明された. 心筋脂肪酸代謝イメージングは重症患者・透析患者でも安静時安全に施行できるため, 腎疾患・透析患者におけるリスク層別化・予後評価に有用であり, 早期診断・早期治療介入により, 予後の改善に寄与できるものと期待される.

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© 2014 一般社団法人 日本透析医学会
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