日本透析医学会雑誌
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原著
身体組成分析装置および非侵襲的心拍出量モニタを用いた血液透析中の循環動態モニタリングの検討
藤堂 敦吉岡 正訓染矢 法行坂口 美佳田中 久夫長谷川 廣文西村 昌美辻 義弘人見 泰正水野 (松本) 由子
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2014 年 47 巻 10 号 p. 615-622

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抄録

糖尿病や高齢透析者の増加を背景に血液透析中の血圧低下や循環動態が安定しない症例が増加している. また透析患者は, 体液量が著明に変化するため, 安全に血液透析を実施する上でも循環動態のモニタリングは重要である. 本研究では, 血液透析施行中の循環動態を, 身体組成分析装置と非侵襲的心拍出量モニタを用いて客観的に評価できるか検討することを目的とした. 対象は7例 (男性1例, 女性6例), 平均年齢61歳であった. 方法は, 血液透析を5時間施行した際の透析開始前, 開始時, 開始後1時間ごと, 終了後のそれぞれにおける, 身体組成値と一回心拍出量の測定を行い, 比較対照として, hANP値, 血清ドーパミン濃度, および血圧を測定し, 関連性について検討した. 細胞外液率および浮腫率は, 透析開始前値と比較し, 血液透析開始3時間値以降で有意に低値を示した. また細胞外液率および浮腫率は, 循環血液量変化率との間にそれぞれ正の相関関係を示した. 一回拍出量は, 透析開始前値と比較し, 透析開始3時間値以降で有意に低値を示し, 循環血液量変化率との間に正の相関関係を示した. 血圧は, すべての身体組成値および一回拍出量との間に, 相関関係を示さなかった. 脈拍数は, 循環血液量変化率および一回拍出量との間に, 負の相関関係を示し, 血清ドーパミン濃度との間に正の相関関係を示した. 本研究の結果, 身体組成分析装置, および非侵襲的心拍出量モニタは, 循環血液量変化率と同様に血液透析中の循環動態をモニタリングできる, 簡便でかつ効果的な方法であると考えられた. また, これらの手法は透析の基準体重 (dry weight : DW) の設定にも有用なツールである可能性が示された. 透析中の血圧変化は, 身体組成値や一回心拍出量に対して速効的に変動しないことが示され, 脈拍数は, 循環血液量変化率に対して, 血圧よりも速効性に反応する性質がある可能性が示唆された.

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© 2014 一般社団法人 日本透析医学会
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