2016 年 49 巻 4 号 p. 279-283
70歳台男性. 薬剤性急性腎障害にて透析を行い腎機能の回復を待ったが, 回復せず維持透析となった. ヘパリン透析開始後, 回路凝固, 血小板減少を認め, antigen assayにて抗platelet factor 4 (PF4) /ヘパリン抗体陽性を認めた. ヘパリン起因性血小板減少症 (heparin-induced thrombocytopenia : HIT) と診断し, アルガトロバン透析に変更した. Antigen assay陰性化確認後, ヘパリン透析を再開すると, 再び回路凝固, 血小板減少を生じた. Functional assayを施行した結果, ヘパリン依存性血小板活性化能を認め, HIT再燃と診断した. Functional assayの陰性化を待ち, 全経過として11か月後ヘパリン透析を再開したところ, HIT再燃を認めなかった. 透析領域で, HIT既往患者へのヘパリン再投与の是非およびその時期についてはコンセンサスがない. 本症例のようにantigen assayによる抗PF4/ヘパリン抗体陰性化のみでは, HIT再燃を防止できない可能性がある. HITの診断ならびにヘパリンの再投与の確認には慎重を要し, 血小板活性化能を検出するfunctional assayが有用と考えられた.