腹膜透析では透析期間が長期になると腹膜劣化が生じる懸念がある. この原因として, 透析液中に含まれている高濃度のブドウ糖やブドウ糖分解産物 (glucose degradation products: GDPs), 乳酸などの非生理的成分の影響が考えられている. 近年, 透析液の生体適合性を改善させた新しい透析液が開発・臨床使用されるようになった. その一つがブドウ糖の代わりにイコデキストリン (icodextrin) を浸透圧物質として使用した透析液である. GDPs濃度を減少させた乳酸中性透析液も発売され, 本邦における被囊性腹膜硬化症 (encapsulating peritoneal sclerosis: EPS) の発症が減少した. さらに生理的濃度の重炭酸と低濃度の乳酸を緩衝剤として使用した新しい中性透析液も発売された. 同じ中性透析液であっても重炭酸透析液では乳酸透析液よりも腹膜中皮細胞への障害性が低減化されていることが基礎研究で明らかにされてきている. 今後, 重炭酸中性透析液の有用性を臨床で確認していく必要がある.