日本透析医学会雑誌
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症例報告
出産後腎障害が遷延し, 血液透析を要したHELLP症候群の1例
高畑 尚脇野 修徳山 博文林 晃一林 松彦落合 大吾佐藤 卓中村 加奈子仙波 宏史田中 守伊藤 裕
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2017 年 50 巻 12 号 p. 795-800

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抄録

症例は33歳女性. 妊娠29週に尿蛋白2+, 血圧高値を指摘され, 内服治療を開始するもコントロール不良, 胎児発育不全を指摘され, 30週で入院となった. 同日中に血圧は急速に上昇し, 頭痛, 右上腹部痛, 嘔吐, 視覚障害を認めた. 肝逸脱酵素上昇, 血小板減少, 溶血性貧血を認め, HELLP症候群と診断し, 緊急帝王切開となった. 術同日より意識障害を認め, 頭部MRIで可逆性後頭葉白質脳症 (PRES) を疑う画像変化を認めた. 肝機能障害は出産後悪化するもすぐに改善, 血小板減少や溶血性貧血も徐々に回復したが, 出産後乏尿・腎障害を認め遷延した. 血液透析を導入, 新鮮凍結血漿の投与を行った. その後, 緩徐に改善し, 術後13日目を最後に透析を離脱した. HELLP症候群は妊娠中に発症する血栓性微小血管障害症 (TMA) であり, 典型的には腎障害の遷延は稀で, 妊娠の終了により速やかに改善する. 本症例は出産後, 腎障害のみ重症化, 遷延し, 稀な経過をたどった.

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© 2017 一般社団法人 日本透析医学会
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