2017 年 50 巻 4 号 p. 255-260
症例1は43歳女性. 原疾患は糖尿病. 透析歴9年. 右足壊疽のため, 当院へ入院した. この時, 下腹部に多発する有痛性の硬結を認め, 徐々に潰瘍化していった. 皮膚生検にて, 動脈の中膜および内膜に輪状の石灰沈着を認め, カルシフィラキシスと診断した. カルシウム (Ca) ・リン (P) の調整, 局所処置, 抗生剤の投与を継続したが軽快せず, 敗血症を合併し, 死亡した. 症例2は42歳女性. 原疾患は糖尿病. 透析歴2年. 左足趾の難治性潰瘍に対する加療目的で, 当院へ入院した. 局所手術時の病理検査で, カルシフィラキシスと診断. ワルファリンの内服中止, Ca・Pの調整, 局所処置の継続により, その後の経過は順調であった. カルシフィラキシスは, 中小血管の石灰沈着による末梢循環不全をもたらす病態で, 比較的頻度は少なく, 認知度は低い. 血液透析患者の難治性の皮膚潰瘍をみた際には, 常にカルシフィラキシスの存在を念頭に置く必要がある.