日本透析医学会雑誌
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症例報告
急性炭酸リチウム中毒に対して早期の胃洗浄と持続的血液透析が奏功した1例
森澤 紀彦大瀧 佑平菅野 直希奥野 憲司卯津羅 雅彦三井 理華遣田 美貴武田 聡横尾 隆
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2017 年 50 巻 5 号 p. 315-320

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抄録

リチウム中毒は双極性障害の治療に用いられるが, 有効血中濃度領域は比較的狭く中毒域が近いこと, 多岐にわたる中毒症状が注意点としてあげられる. 今回われわれは, 炭酸リチウム24gを内服し, 意識障害およびQT延長をきたした急性リチウム中毒を経験したので報告する. 症例は26歳女性, 希死念慮を認め, 炭酸リチウム24gを過量服薬した. 意識障害を呈したため当院救急搬送され, 過量服薬後1時間程度で胃洗浄を施行, 心電図で軽度のQT延長を認め, 急性リチウム中毒を疑い, 持続的血液透析を開始した. 開始後, 症状改善し, 血中リチウム濃度の再上昇を認めず, 経過良好にて第7病日に退院となった. リチウムは非常に透析性の高い物質であり, 循環動態が不安定な場合には持続的血液透析が望ましい. 急性中毒に対して早期の血液透析開始により, 血中リチウム濃度を低下させ, 脳内および各組織におけるリチウム濃度の上昇抑制が可能となることが示唆された.

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© 2017 一般社団法人 日本透析医学会
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