日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
症例報告
難治性乳糜腹水に伴うショック・透析困難症に対して腹腔-静脈シャント造設が奏功した1例
前川 洋根岸 康介
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 50 巻 7 号 p. 493-500

詳細
抄録

腹腔-静脈シャント (PVS) は, 塩分制限や大量の利尿薬でコントロールのつかない難治性腹水に対する治療オプションの一つとしてあげられる. 今回われわれは腹腔鏡下幽門側胃切除術後に難治性乳糜腹水を認め, それに伴う急性腎障害 (AKI) を生じた症例を経験した. 乏尿となり, 腎機能は改善せず血液透析を導入したが, 腹水に対しては再三の腹水濾過濃縮再静注法を施行したものの腹水はコントロールできなかった. さらに低アルブミン血症が進行し, ショックに至り透析困難症を生じた. 腹水のコントロールと血圧の維持のためPVSが挿入されると, 腹水量は著減し, 血圧も上昇した. これによりノルアドレナリンを使用せずとも血液透析が可能となった. PVSは難治性乳糜腹水を伴う透析困難症に有効であることが示唆された.

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本透析医学会
前の記事
feedback
Top