日本透析医学会雑誌
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症例報告
血液透析後の発熱から発症した無菌性胸膜炎がANCA関連血管炎と考えられた1例
橋本 悠作加藤 さや佳高橋 大輔乙竹 聡田代 温武田 有記立枩 良崇三浦 裕子葛谷 明彦野﨑 裕広青山 功
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キーワード: 発熱, 胸膜炎, ANCA, 血液透析
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2018 年 51 巻 3 号 p. 243-249

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抄録

60歳代女性. 薬剤性腎障害で28年前に血液透析を導入, 肺MAC症にて通院中であった. 透析後の発熱が1か月以上持続し紹介入院. 入院後も発熱は透析後に始まり翌日には解熱. 透析条件を変更し感染症を検索したが有意な所見はなかった. 入院2週間後, 胸痛と右側胸水, 呼吸不全が出現, 発熱も連日認めるようになった. 翌日, 経気管支肺胞洗浄にてMAC-PCRは陰性, 血清MPO-ANCA高値が判明した. 胸水穿刺では, 滲出性胸水で細菌培養や結核菌PCRは陰性, 胸水中MPO-ANCAが高値であった. 胸腔内以外の所見なくANCA関連血管炎 (AAV) に伴う胸膜炎が最も疑われた. 肺MAC症の治療後にステロイドを開始, 発熱や胸水は速やかに改善した. 今回, 胸膜炎を唯一の肺合併症とするAAVを経験したが, たとえ発熱が透析後に限局しても透析条件の見直しに留まらず, 一般的な発熱と同様に血管炎も念頭において鑑別を行うべきである.

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© 2018 一般社団法人 日本透析医学会
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