2021 年 54 巻 10 号 p. 513-521
症例は76歳男性.喉頭癌と肺腺癌の既往がある.来院時点ですでに無尿を呈する高度腎不全を認め,緊急血液透析を行った.血清学的検索にて抗糸球体基底膜(GBM)抗体強陽性(>350 U/mL)が判明し,抗GBM抗体腎炎と診断した.ステロイドパルス療法と血漿交換を行ったが,抗体価は検出範囲上限を超えた状態が持続し,維持透析に移行した.ステロイドは漸減し,ニューモシスチス肺炎(PCP)予防としてペンタミジン吸入を行った.退院後,発熱と血痰,血清β‒D‒グルカン上昇を認め,気管支鏡検査にてPCPおよびびまん性肺胞出血と診断した.ST合剤とステロイド投与により肺炎と肺胞出血は改善し,血漿交換を追加したところ抗体価は低下した.本例は高抗体価の抗GBM抗体腎炎患者が,PCPを契機に肺胞出血を生じた経過であり,抗GBM抗体の陰性化しがたい症例では,免疫抑制療法中の厳密な肺感染症予防が肺胞出血回避に重要と考えられた.