難治性下顎骨骨髄炎に持続的局所抗菌薬灌流(continuous local antibiotic perfusion: CLAP)を施行し,手術を行うことなく感染を制御し得た透析患者の1例を経験した.症例は透析歴20年の66歳男性.齲歯の抜歯18日後に悪寒戦慄と発熱を生じ維持透析施設に入院.抗菌薬投与で改善せず,3日後に当院紹介となった.左下顎から側頭部にかけて膿瘍を認め,緊急ドレナージ術を施行した.感染制御が困難であり,第53病日の造影CT検査で下顎骨の骨融解を認めたため下顎骨切除を検討したが,耐術不能と判断した.その後さらに発熱再燃や白血球数およびプロカルシトニン,CRPの上昇がみられたため,CLAPを下顎骨に対して施行した.CLAPは2週間施行し,副作用なく終了した.CLAP終了後は全身状態も改善し,第97病日に転院した.5か月後のCT検査では膿瘍の再燃はなく,下顎骨も骨形成を認めた.CLAPは透析患者の骨軟部組織感染症に対する重要な治療選択肢となる可能性がある.