2025 年 58 巻 8 号 p. 395-400
複数回のナファモスタットメシル酸塩(NM)使用歴あり,血液透析開始直後に皮膚症状を含む随伴症状を欠いた突然の心停止に至り,原因としてNMのアナフィラキシーショックと診断した1例を報告する.維持血液透析中で心筋梗塞と糖尿病の既往のある73歳の男性.経直腸的前立腺生検翌日に,NMを用いて血液透析を施行したところ,透析開始10分後に血圧低下および意識障害が出現,直後に心停止した.ただちに心肺蘇生が行われ,自己心拍再開した.集中治療室入室後,NMを用いた持続的血液濾過透析の開始直後に再度血圧低下,全身の皮疹が出現し,NMによるアナフィラキシーショックが強く疑われた.一時人工呼吸器管理となったが,翌日には抜管され,重篤な合併症なく退院した.過去に複数回のNM使用歴のある透析患者でも重篤なアレルギーをきたす可能性があり,NMを使用した際に血圧低下や意識消失などの症状を呈した場合はアナフィラキシーを鑑別にあげる必要がある.