人工透析研究会会誌
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血液透析中の慢性腎不全患者における下垂体-副腎皮質機能について
長谷川 弘一小田 初夫大伴 清馬岡本 輝夫森井 浩世
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1981 年 14 巻 4 号 p. 185-191

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抄録
血液透析中の慢性腎不全患者の低血圧の成因の1つとして下垂体-副腎皮質機能について検討するために血中ACTH, cortisolを測定したところ血中ACTHレベルは正常範囲内にあり, 血漿cortisolレベルも正常範囲よりやや高値を示した. 低血圧群, 正常血圧群, 高血圧群の3群の間にはACTH, cortisolレベルとも有意の差を認めなかった. そしてACTHとcortisolレベルの間には有意の関係ではないが弱い負の関係をみた. 血液透析前後の血中cortisolレベルは全体として透析後は透析前に比して高値を示したが低血圧群では後値は前値に比して低下しており緩除な透析が原因と考えられた.
血液透析前後のcortisol比と透析による体重減少率及び血液透析前後の中間血圧の比については有意の関係をみた. すなわち透析による水分除去量, 中間血圧の低下が大きいほどcortisol値は上昇をみた. 腹膜灌流中の慢性腎不全患者の灌流中の経時的変化ではACTH, cortisolレベルは平行した関係を示した. ACTH, cortisolレベルの日内変動については健常人と同一のパターンを示した. さらにrapid ACTHテストは正常反応を示した. 以上の成績より血液透析中の慢性腎不全患者の下垂体-副腎皮質機能は正常であり, 血液透析前の低血圧の成因として下垂体-副腎皮質が関与している可能性は少ないものと思われた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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