人工透析研究会会誌
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高齢透析患者におけるリハビリテーションの意義
杉山 美智子多田 静江本田 浩子森 陽子座間 幸子吉田 公子
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1984 年 17 巻 2 号 p. 135-139

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抄録
近年高齢者の透析導入が増え, 当院で昭和57年には, 60歳以上が総導入数の29%を占めた. 昭和58年5月末現在, 定期透析中の患老118名中, 60歳以上は33名, 平均年齢68.5歳である. 原疾患は, 慢性糸球体腎炎12例, 糖尿病性腎症と腎硬化症各6例, 痛風4例, その他5例である. 主な合併症として, 狭心症, 脳硬塞後遺症, 高度視力障害等がみられる.
60歳以上の透析患者の死因を昭和50年から57年の8年間でみると, 死亡例26名中全身衰弱が9例で最も多い. 理学療法, 作業療法 (PT, OT) 実施は高齢老の増加に伴い増えており, 実施の理由は, 臥床による筋力低下が最も多く, 精神活動低下を合併する例もみられた. また, その原疾患は糖尿病がPTで約44%と最も多い.
機能訓練が効果的であった1例を紹介する. 70歳男性, 糖尿病性腎症. 透析歴4年で, 2年前退職してから次第に活気がなくなり, 昭和57年5月, 意識障害から昏睡に陥る. 意識回復後も機能障害が残り, 関節拘縮と筋力低下に対してPTが開始された. 軽度の筋力低下と痴呆を残して退院後, 自宅では臥床がちで悪化が認められたため, 外来でのPTを再開, 妻の協力を得て自宅でも訓練を行えるようになり, 筋力とともに精神活動の改善がみられた.
高齢透析患者は精神面を含めて多くの問題を持つ. 歩行障害等の機能障害に対しては, 早期に機能訓練を開始することが予防のために重要である. また精神面に対しても効果的と思われる. そしてそれを継続することが必要であり, 医療スタッフとともに, 家族の協力, 根気強い働きかけが大切である.
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© 社団法人 日本透析医学会
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