人工透析研究会会誌
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血液透析によるアポ蛋白の変動
山城 有機荘野 忠泰橋本 晋弛岩谷 逸平小林 登三木 章三後藤 武男藤田 嘉一岡 徹
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1985 年 18 巻 3 号 p. 349-354

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抄録

今回, 著者らは腎不全状態における脂質代謝異常について血中Apo A1, A2, Eを中心に, その他の脂質分画の1回の血液透析前後における変動および合併症の有無による差異等について検索を試みた. Apo A1, A2は血液透析患者において低下が認められた. しかし, 1回の透析前後においてはApo A1, A2は, 合併症のない慢性腎不全群では, 透析前値 (n=15, Apo A1=92.8mg/dl, Apo A2=22.2mg/dl) に較べて透析後値 (Apo A1=118.2mg/dl, Apo A2=27.9mg/dl) では各々p<0.0005, p<0.01と有意な上昇を示した. 血液濃縮の影響を考慮し, 透析前後における血清総蛋白値で補正したが (Apo A1=101.5mg/dl, Apo A2=23.9mg/dl), なおApo A1, A2は上昇傾向を示した. しかし, 糖尿病および肝硬変合併例においては1回の透析後に上昇傾向は認められなかった. さらに透析前後におけるApo A1, A2とHDL-C, LCAT活性, 血清コレステロール結合能 (serum cholesterol binding reserve, 以下SCBRと略す) との相関について検索を試みたが, いずれも正の相関を認め, 特にApo A1, A2とHDL-Cとは, 各々r=0.833, r=0.641と有意であった. Apo Eは透析前後 (n=14, 前値=4.4mg/dl, 後値=4.1mg/dl) において有意な変動を示さなかったが, 透析後値の血清総蛋白値による補正値 (3.9mg/dl) では, p<0.01と有意な低下を示した. また, 血液透析患者におけるヘパリン負荷テストでは, Apo A1, A2, E, HDL-CおよびSCBRについては有意な変動は認められなかった. これらの結果より, 血液透析患者におけるApo A1, A2, HDL-C, SCBRおよびLCAT活性の1回の透析後における改善には透析により除去されうるuremic toxin等の関与が推定された.

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© 社団法人 日本透析医学会
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