日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
キュプロファン膜ダイアライザーで起きる一過性白血球減少症改善の試み -HD前自家血液循環法の適用-
丘 博文
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 21 巻 8 号 p. 725-729

詳細
抄録

キュプロファン膜ダイアライザーで起きる一過性白血球減少症 (HTL) の改善を目的として自家血液による透析 (HD) 前の閉鎖循環法を試みた. 方法はHD開始時, 穿刺後自己血液がダイアライザーと血液回路を充填した時点で回路をシャントから閉じ, 閉鎖回路にして20分間循環した. その後閉鎖回路を解き, シャントに連結してHDを行った. 慢性血液透析患者10名 (平均年齢は45.2±10.1歳, 平均透析期間は65.3±31.9月間) に施行した. キュプロファン膜ダイアライザーとしてテルモ社製TAF10W, 15W, 旭メディカル社製AM-NE01000, 2000, セルロースアセテート膜として帝人社製TF-160, EVA膜としてクラレ社製KF-201-150を用いた. HD中の血中白血球, 好中球, 好酸球, 好塩基球, 単球, リンパ球数の経時的変化を測定した. 徒来のHD法では, 白血球数はHD開始15分でキュプロファン膜26.7±3.0%, セルロースアセテート膜は34.0±1.1%, EVA膜は65.7±1.3%まで低下した. HD前自家血液循環法を用いると, キュプロファン膜は50.0±10.6%まで回復し有意の改善を認めた. HTLの改善はこの前処理をした場合は, しなかった場合に比較して早い回復を示した. 白血球分画の透析終了時までの経時変化では, 好中球に対して急激な減少を抑制する効果を認めたが, リンパ球に対して影響はみられず, 好酸球, 好塩基球, 単球にも顕著な影響は認めなかった. この方法によるHTLの改善は主に好中球減少の緩和によるものである. また, 透析中の易感染性を気にすることなく, 実用上可能な簡便法であると考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top