日本透析療法学会雑誌
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腎不全時のグアニジン代謝 -骨格筋におけるクレアチン代謝についての検討-
平田 昌義村本 弘昭黒田 昌宏伊藤 正典畠山 収一春木 克夫紺井 一郎東福 要平竹田 亮祐
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1989 年 22 巻 6 号 p. 617-622

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抄録

我々は慢性腎不全保存療法期にはグアニジノ酢酸 (GAA) 生成は低下し, 維持透析期にはむしろ血中GAAは増加し, クレアチン (CR) はより著明な高値を呈してくることを報告し, 骨格筋におけるCR摂取障害を推定したので, 今回はこの観点より検討した. 正常対照者14例, 慢性腎不全保存療法期群8例, 維持透析期群14例, 急性腎不全群5例の大腿静脈 (V) および大腿動脈 (A) より採血し, BUN, Cr, GAA, CRを測定した. その結果 1) 正常対照者のV側でのGAAは28.0μg/dl, CRは538.4μg/dl, A側でのGAAは27.1μg/dl, CRは629.6μg/dlでCRはA側においてV側に比べ有意に高値を示し, 骨格筋CR摂取率 (CRU) は18.1%であった. 2) 慢性腎不全保存療法期群のV側でのGAAは21.1μg/dl, CRは369.4μg/dlと両者共に正常対照群に比べ低値であったが, CRUは19.8%と正常対照群と同等の値であった. 3) 維持透析期群のV側でのGAAは29.8μg/dlで正常対照群とほぼ同等の値であったが, CRは4446.8μg/dlと有意な高値を示し, CRUは-11.5%と低値を示した. 4) 急性腎不全群のV側でのGAAは10.4μg/dlと正常対照群に比べ低値であったが, CRは2805.7μg/dlと高値を示し, CRUは-9.6%と正常対照群に比べ有意に低値を示した.
以上のことより腎不全時には骨格筋におけるクレアチン代謝に異常が認められ, 慢性腎不全維持透析期群および急性腎不全群において両群ともに血中CRの高値, 骨格筋CR摂取率の低値を認めたことより, 全身的な異化亢進, uremic toxinの貯溜等の影響により骨格筋の膜透過性の亢進の結果, クレアチンが筋内より遊出している可能性が考えられた. しかしながら, 筋へのクレアチンの摂取を何等かの物質が阻害している可能性等も否定し得ず, 筋内におけるクレアチン代謝の異常も含め, 今後の検討が必要である.

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