日本透析療法学会雑誌
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内シャント静脈高血圧症23例の検討
中川 芳彦太田 和夫佐藤 雄一村上 徹提嶋 淳一郎澤田 登起彦河合 達郎渕之上 昌平寺岡 慧阿岸 鉄三
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1993 年 26 巻 12 号 p. 1777-1782

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抄録

我々は, 1991年1月より1992年12月までの期間中に, ブラッドアクセス作成後に当該肢全体の腫脹を呈した静脈高血圧症例を23例経験した. 症例は平均年齢55.4±10.0歳, 透析歴は平均9.7±4.8年であった. 当該肢に透析用カテーテル留置の既往のあった症例は5例で, その留置期間は平均24.5±9.0日であった. 1例は定型的乳房切断術と放射線照射の既往があり, さらに1例は, 永久的ペースメーカーを留置されていた. 他の15例 (65.2%) には上述の既往はなかった. 血管造影は14例に施行し, カテーテル留置の既往のあった3例全例に中枢側静脈の閉塞を認めた. 留置の既往のなかった11例では, 中枢側静脈の閉塞を5例に, 狭窄を5例に認め, 残りの1例はシャント静脈の拡張のみであった.
手術は22名に施行した. 中枢側静脈閉塞8例のうち7例にシャント閉鎖術 (閉鎖術) を, 1例に吻合部修復術 (修復術) を施行した. 狭窄5例のうち1例に修復術兼バンディング術を, 2例に閉鎖術を施行した. 1例に中枢側狭窄部の経皮的血管形成術 (PTA) 兼修復術を行った. 血流過剰のみの1例には修復術兼バンディング術を施行し, 全例, 術後に腫脹は改善された. シャント血管造影を施行しなかった9例のうち7例に閉鎖術を, 2例にバンディング術を施行した.
シャント静脈高血圧症の多くは透析用カテーテル, 完全静脈栄養用カテーテル, 永久的ペースメーカー用リードなどの長期留置が原因とされていたが, 一方で, 前述の既往が全くないにも拘わらず中枢側静脈の閉塞する症例もある. その機序は, シャント血流過剰のためにシャント静脈が拡張, 伸展し, 分岐部で乱流が生じ内膜の肥厚, 内腔の狭窄を引き起こし, 最後には分岐部で閉塞するものと思われる. 治療法としては, 症候が重度の症例では内シャント閉鎖術が必要であるが, 中等症では, 吻合部修復術, バンディング術, PTA, バイパス術なども有効である.

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