1993 年 26 巻 12 号 p. 1807-1810
我々は, 血液透析中に抗不整脈薬の催不整脈作用による心室頻拍を2度起こした症例を経験した. 症例は56歳女性. 昭和59年, 慢性糸球体腎炎のため血液透析を導入された. 平成3年頃より透析不足による体液貯留傾向が出現し, うっ血性心不全で入院となった. 入院1週間目の透析中, ジソピラミドの催不整脈作用による心室頻拍を起こし, その2か月後にはピルジカイニドの催不整脈作用による心室頻拍を起こした. いずれも電気的除細動で復帰した. 最近, 抗不整脈薬による催不整脈作用が注目されているが, 血液透析患者における報告は少なく, 慢性腎不全患者の薬物血行動態とは必ずしも一致しない. このため定期的な抗不整脈薬の血中濃度の測定は血液透析患者ではより重要であると考えた.