日本透析医学会雑誌
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CAPD療法における経過不良例の生活環境とストレスについて
西岡 加津子市原 信子太田 めぐみ江戸 稚香子山田 和美山下 由美子藤田 恵子永原 芳江丸岡 直子近田 育子吉村 光弘斉藤 弥章木田 寛杉岡 五郎
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1994 年 27 巻 2 号 p. 113-117

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抄録

CAPD導入時には積極的適応の基準を満たし, 導入後は良好な経過が期待されると考えられた15例のうち, 心不全・溢水および腹膜炎を繰り返した6例をI群, 経過が良好であった9例をII群として, 生活環境およびその変化から受けるストレスに対処する能力について検討した.
性・年齢・職業および生活環境についてみると, I群は独身男性, 自営業 (各2名) と幼児をもつ若年女性, 会社社長 (各1名) であった. またII群では, 30-40代の働き盛りの男性 (3名) と血液透析から移行した男性 (1名) と中年の専業主婦 (5名) であった.
ストレス度は, 導入後の安定した状況下では, I群が53-159点, 平均73±17点, II群が53-212点, 平均110±12であった. しかしI群では合併症のおきる直前に118-480点, 平均295±48点に上昇した (p<0.005). ストレス増大の原因として, CAPDにおける最大の支援者である家族の入院, 転職, 職場の配置転換, 退職, 住居の新築, 育児および経済的困難などのさまざまなケースがみられた.
食事管理能力は, II群の中年の専業主婦で高く, これは子供がすでに成長しており食事療法に対して専念できるためと考えられた. 一方, I群の独身男性や育児に追われている若年女性では劣っていた. これらの症例では, 麺類を多く摂ったために, 蛋白質の摂取が少なかったり, 外食の頻度も高く, 塩分制限も守られなかった.
家族支援については, I群に比べてII群でより協力的であった (p<0.05).
今回の研究により, 永続的な自己管理が必要なCAPD療法が, 患者に大きな精神的負担となっており, これに生活環境の変化から受ける新たなストレスが加わると, 食事管理・バッグ操作に集中できなくなり, 溢水・腹膜炎などの合併症を誘発する可能性が示された.

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