日本透析医学会雑誌
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高度の好酸球増加を伴う急性間質性腎炎による急性腎不全の1例
小笠原 英幸木山 茂副島 秀久松下 和孝
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1994 年 27 巻 2 号 p. 129-132

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抄録

高度の好酸球増加を伴った間質性腎炎による急性腎不全の1例を経験した. 症例は54歳男性で, 1990年9月6日に頭蓋骨骨折で某脳外科病院で保存的治療を受けていた. 9月6日から9月15日までにジクロフェナクナトリウム坐薬50mgを9回, 9月15日から9月19日までピペラシリン1日4g投与される. 経過良好であったが, 10月7日夕方, 同室者からもらった刺身を食べ, 10月8日未明より悪寒, 下痢, 発熱とともに, 好酸球18%と好酸球増加を認めた. 10月9日, 下痢, 腹痛の増悪, 嘔吐, 高熱を認め乏尿傾向となり, 10月11日無尿となったため当院紹介入院となった. この間, 10月9日より, ピペラシリン2gを5回投与されていた.
胃内視鏡検査では, アニサキスが胃壁に侵入した痕跡が認められた. 腎機能は好酸球の減少に平行して回復したが, 2週間に7回の血液透析を要した.
開放腎生検では間質の浮腫と好酸球, リンパ球の浸潤, 尿細管の破壊像が認められ, 間質性腎炎と診断した.
薬剤性間質性腎炎や寄生虫症では好酸球が増加することが報告されているが, 過去の報告では, 末梢血好酸球は少なくとも20%以下であった. 自験例では, 経過中に末梢血好酸球は78%まで増加した.
本症例では, 発症時にすでに好酸球増加が認められており胃アニサキス症が好酸球増加および急性腎不全の誘因として疑われた. しかしながらピペラシリンはDLST陽性であり, 脳外科入院初期の投与時に感作された可能性もあり, 発症後の再投与による過敏反応と嘔吐, 下痢による脱水が増悪因子となったことも考えられた.

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