日本透析医学会雑誌
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日本の透析施設におけるHCV感染に関する実態調査
秋葉 隆川口 良人黒田 満彦二瓶 宏日台 英雄山川 真山崎 親雄丸茂 文昭
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1994 年 27 巻 2 号 p. 77-82

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抄録

日本透析療法学会総務委員会感染対策小委員会は日本の慢性透析患者のHCV感染の実態を把握しようとした. 1993年2月, 施設会員2,309施設にアンケートを発送し, 61.0%の施設, 血液透析患者の57.7%, CAPD患者の52.1%の回答を得て, これらを解析した. 7地区別の回答率に差がなく, 回答された私的診療所の割合は母集団と有意差がなかった.
第2世代HCV抗体陽性率血液透析患者の23.9%, CAPD患者の11.2%で, 陽性率は有意に血液透析が高値だった. 陽性率は血液透析で東京地区の19.6%から中国四国地区の26.7%まで, CAPDで北海道・東北地区の7.6%から九州沖縄地区の14.0%まで分布していた.
最近3年間に経験したHCV陽性肝硬変症はHCV陽性透析患者1,000人1年当たり8.57人, HCV陽性の肝癌はHCV陽性患者1,000人1年当たり3.87人だった.
最近3年の透析従事者のHCV陽性患者の用いた針による針刺事故は透析従事者1,000人当たり15.2人/年だった. 入職後の透析従事者のHCV抗体陽性化は透析従事者1,000人当たり1.14人/年だった.
HCV陽性患者の取扱いマニュアル, HCV陽性患者に使用した針による針刺事故時のマニュアルを持っていると回答したのは各21%, 25%のみであった.
以上の調査結果から慢性透析療法を受けている患者とそのスタッフはHCVウイルス感染罹患率が一般人口より高いことが定量的に明らかとなった. 今後その対策を明らかにすることが感染対策小委員会に求められている.

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