日本透析医学会雑誌
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維持透析症例における抗好中球細胞質抗体の臨床的意義についての検討
有村 義宏簑島 忍松澤 直輝神谷 康司田中 宇一郎蓬田 茂中林 公正北本 清長澤 俊彦
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1994 年 27 巻 4 号 p. 289-294

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抄録

抗好中球細胞質抗体 (anti-neutrophil cytoplasmic autoantibodies: ANCA) 陽性症例は, 急速進行性腎炎症候群 (rapidly progressive glomerulonephritis: RPGN) を生じ, 透析導入率が高い. 今回, 我々は透析歴1年以上の維持透析183症例でANCAの臨床的意義について検討した. その結果, 1) ANCA陽性症例を11例 (6.0%) に認めた. このうち, MPO-ANCA陽性例は8例 (4.4%) で, PR3-ANCA陽性例は4例 (2.2%) であった. なお1例はMPO-ANCAとPR3-ANCAを同時に認めた. 2) ANCA陽性の維持透析症例は, RPGNの病歴の有無により2群に分けられ, RPGNの病歴のある症例のANCAは血管炎に関連していると思われた. またANCA再上昇時には血管炎症候群の再燃に留意する必要があると思われた. 一方, ANCA高値が持続するも血管炎症候群は寛解期にあり, 順調に外来維持透析施行中の患者も認めた.
なお, RPGNの病歴のない症例のANCAは, 血管炎症候群とは関連がなく, 慢性腎不全や長期透析に伴う免疫異常が関与していると推測された.
ANCA, 特にMPO-ANCA陽性で, RPGNの病歴を有する維持透析症例では血管炎による多臓器障害, 特に肺出血に留意する必要があると思われた.

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