日本透析医学会雑誌
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難治性腹水に対する腹水の濾過・濃縮再静注および腹腔-大静脈シャントポンプによる治療経験
桑原 守正高木 紀人西谷 真明松下 和弘大田 和道中村 晃二藤崎 伸太
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1994 年 27 巻 4 号 p. 307-311

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抄録

内科的治療が困難であった難治性腹水に対して肺水腫の危険性を避けるために, まず腹水の濾過濃縮再静注を行い腹水の量を減じた後に, 腹腔と大静脈の間にLeVeenの腹水ポンプを用いてシャントを形成し, 半永久的な腹水の消失・減少を試みた.
対象は男4名, 女2名の計6名で, 年齢は42歳から65歳, 平均55.3歳であった. 腹水をもたらした原疾患は慢性腎不全が2名, 肝硬変が2名, 胃癌, 子宮癌が各々1名であった.
腹水の処理には旭メディカル社のPlascit-01を用い濾過器としてAHF-MAを, 濃縮器としてAHF-UNを用いた. 得られた腹水2-4lを100-200mlに濾過・濃縮し, これを4-7回, 平均4.8回再静注した. この後に腹腔と大静脈の間に腹水シャントを作成した.
6例中5例が死亡したが, 各々1-3.5年, 平均2.3年の延命効果と自覚症状の軽減が得られた. 6例中1例は本法施行後4.2年が経過したが安定維持透析中である. なお本法施行中, 特別な合併症は認められなかった.
高度の難治性腹水に対して腹水を濾過濃縮再静注後に腹水シャントを形成する方法は, 各々の単独療法の場合よりもより有効で安全な方法であると考えられた.

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