日本透析医学会雑誌
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カテーテル挿入の既往がない患者での鎖骨下静脈狭窄症, および橈骨皮静脈狭窄症を合併した血液透析例
竹内 正至栗原 怜桜井 祐成米島 秀夫松信 精一大薗 英一葉山 修陽飯野 靖彦中原 秀樹
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1994 年 27 巻 7 号 p. 1055-1060

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抄録

一時的なブラッド・アクセスとして静脈カテーテル挿入の既往がある透析患者での鎖骨下静脈狭窄症あるいは血栓症は, しばしば認められる合併症として報告されている. しかしカテーテル挿入の既往がない患者に生じることは稀と考えられる.
我々は静脈カテーテル挿入のない患者のシャント側中枢部の鎖骨下静脈狭窄症, および橈側皮静脈狭窄症の2例を経験した.
1例目は右上腕動脈と正中静脈間にシャントを持つ19歳の男性で, シャント手術7年の後, 右上肢と頸部の浮腫が発生した. 血管造影とMRアンギオグラフィー (MRA) で右鎖骨下静脈が胸郭出口部で高度の狭窄を呈していた. Percutaneous transluminal angioplasty (PTA) 術を施行したが, 4か月後に再発した. 再度のPTAとシャント血流減少術とを同時に施行し, 症状は改善した.
2例目は左上腕動脈と正中静脈間にシャントを持つ48歳の男性で, 左肩から上肢の浮腫と透析中の痛みを訴えた. 血管造影とMRAで左橈側皮静脈が腋窩静脈に合流する直前で高度の狭窄を示していた. PTAとシャント血流減少術を施行したが, 3か月後にシャントが閉塞した. 狭窄部切除と再建術により症状は改善した. 切除した静脈の組織は著明な内膜の肥厚と弁周囲の狭小化を認めた.
結論および考察: 1) カテーテル挿入の既往のない血液透析患者でも静脈の狭窄および閉塞を生じる可能性がある.2) 狭窄の要因として, シャント血流の増大と胸郭出口部 (症例1) や静脈弁 (症例2) といった生理的狭窄部の存在があげられる. 3) 狭窄血管に対するPTAおよび再建術はシャント血流の減少術を併せて行うことが必要である.

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