日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
透析アミロイドーシスの新しい展開
前田 憲志宮田 敏男
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 27 巻 8 号 p. 1119-1126

詳細
抄録

長期透析症例に見られるcarpal tunnel syndrome, destractive spondyloarthropathy, 関節症, 骨嚢腫などがβ2-microglobulin (β2-MG) によるアミロイド症として一元的に説明されようとしている. まだ多くの不明な点が残されているが, 正常なβ2-MGは生理活性を示さず一連の病態を引き起こす主役ではないこと, 一方, 変性β2-MGは強い生理活性を持っており, 病態と関連するいくつかの生体反応が説明し得ることが明らかにされた. 長期透析症例の手術や剖検により得られたアミロイド組織より抽出されたβ2-MGは二次元電気泳動により, 正常のものに比べて, 等電点が酸性側にずれ, acidic β2-MGと呼ばれる. Normalとacidicのものを別々に分取して比較すると, acidic β2-MGは褐色に着色し, 蛍光を発することが明らかにされた. さらにMaillard反応の前期段階の生成物であるアマドリ転移生成物に対する抗体との反応性ではnormal β2-MGは反応しないが, acidic β2-MGは反応すること, また, 最終段階の生成物であるadvanced glycation end-products (AGE) に特異的に反応する抗体による検討においてもnormal β2-MGには反応せず, acidic β2-MGに反応することが明らかにされた. さらに, macrophageに対する走化性についてもnormal β2-MGにはその作用が見られなかったがacidic β2-MGには走化性が認められ, アミロイド組織周辺にmacrophageが多く認められる事実を良く説明している. 次に, macrophageにnormal β2-MGとacidic β2-MGを作用させたときのIL-1βとTNF-αの生成量をみるとnormalではほとんど見られないのに対してacidicのものでは著明な生成刺激が認められた. これらの事実から, AGE化したβ2-MGが-連の病態を引き起こす主因であろうと考えられるようになってきている. アミロイド生成機序, 骨破壊の機序, AGE化の機序, AGE化β2-MGの定量法の確立や構造決定など多くの事項が解明され, 予防・治療法の開発につなげることが望まれる.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
次の記事
feedback
Top