日本透析医学会雑誌
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小児腹膜透析患者における腹膜機能と腹腔内リンパ吸収の検討
朝長 香飯高 喜久雄中村 信也北條 みどり酒井 糾
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1995 年 28 巻 12 号 p. 1545-1550

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抄録

小児腹膜透析患者9例 (5歳-19歳, 平均12.1歳) に腹膜平衡機能検査 (PET) を行い合わせ, アルブミンを用いて腹腔内リンパ吸収量を測定した. 腹膜平衡機能は4例にhigh, 5例にhigh averageと腹膜透過機能は亢進していた. リンパ吸収量は個人差が大きく見られたが, 9例中5例は100ml/回以下, 平均46ml/回と比較的少なく, 4例は100ml/回以上で平均539ml/回と亢進していた. 高濃度の透析液を用いても除水量100ml/回以下と不良な児が2例いたが, 腹膜平衡機能は2例ともhighであり, リンパ吸収量は190ml/回, 396ml/回であった. 除水不良の原因として腹膜機能の亢進は考慮できたが, リンパ吸収の亢進によるものは考慮しにくかった. PETおよびリンパ吸収試験は, 腹膜透析患者の除水不良の原因を追求する上に必要な検査と思われるが, 今回の検討では有用であるとは-概にはいえなかった. また, アルブミンを混注した透析液の使用により, 腹痛あるいは, 腹部不快感を訴えるものが, 9例中6例に見られた. 腹膜機能に影響を及ぼす可能性も示唆され, 今後このような腹膜刺激症状を呈さない物質を用いて腹腔内リンパ吸収量を測定すべきと考えられた.

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