日本透析医学会雑誌
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腎不全を伴った大理石骨病の1例
玉置 幸子東 冬彦玉置 英人徳山 博玉置 政子玉置 英夫中城 忠孝西嶋 洋典柏井 利彦西 理宏阿部 富彌
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1995 年 28 巻 4 号 p. 363-368

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抄録

大理石骨病, 慢性腎不全, 晩発性小脳皮質萎縮症を合併した1例を経験したので報告する. 症例は36歳, 男性. 既往歴は12歳時に蛋白尿を指摘されるも放置. 現病歴は昭和59年5月顔面蜂窩織炎で紀南病院を受診し, BUN135mg/dl, クレアチニン15.3mg/dl, 血液ガス分析にてpH 7.07と著明なアシドーシスを認め血液透析に導入した. 当時より知能低下, 言語障害および肝機能障害あり. 平成元年4月14日当院に紹介され入院となる. 胸部X線写真ではびまん性の骨硬化像を認め, 腰椎・骨盤X線写真でも著明な骨硬化像を認めたため大理石骨病と診断された. 腰椎のMRIではT1, T2強調像ともに無信号を呈し, 骨髄がほとんどないことを示していた. 一方, 運動失調については頭部のMRIで小脳半球が著明に萎縮し, 脳幹部に萎縮が認められなかったため晩発性小脳皮質萎縮症の合併が考えられた.
大理石骨病と腎不全の合併については, 1972年Slyらが尿細管性アシドーシスとの合併を報告し, その全例に赤血球中の炭酸脱水酵素IIの活性が欠損しており, 本疾患が常染色体遺伝する独立した新しい先天性代謝異常症であると主張している. 本邦では1991年荒牧らが第1例を報告しているにすぎない. 本症例の炭酸脱水酵素IIの活性は正常であった. 大理石骨病, 慢性腎不全, 晩発性小脳皮質萎縮症の3つの疾患の関係は明らかではないが, 大理石骨病と晩発性小脳皮質萎縮症の一部はともに遺伝性疾患でありこれらがひとつの疾患の表現型である可能性も否定できず, さらに検索を要するものと考える.

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