日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
顕著な消化管出血の原因となったangiodysplasiaを認めた慢性腎不全患者の3例
松本 博柴崎 敏昭酒井 紀友成 治夫栗山 哲森永 正二郎石飛 幸三浜名 元一奈良 貞博古寺 研一中尾 俊之
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 28 巻 6 号 p. 999-1002

詳細
抄録

我々は, 消化管出血にて発症し顕著な貧血症状を呈した慢性腎不全由来のangiodysplasiaの3症例を経験した. 症例は全例男性で非糖尿病性腎不全の68歳血液透析患者 (症例1), 糖尿病性腎不全の61歳CAPD患者 (症例2) および保存期の72歳糖尿病性腎不全患者 (症例3) の3例. いずれも進行性の貧血症状と下血を主訴に来院した. 従来の上・下部消化管造影および内視鏡検査では出血源の同定ができないため出血シンチグラムで出血点を推測し, 腹部血管造影を行った. 症例1と3は, 空腸枝からの造影剤の血管外漏出を, 症例2では上行結腸領域に拡張した異常血管を認めた. 症例1と3では空腸部分切除を症例2では右半結腸切除を行い, 組織学的に粘膜および粘膜下層に拡張した大小不同の血管の集塊を確認しangiodysplasiaと診断した. 術後3症例とも貧血の進行は停止した. わが国においてはangiodysplasiaは稀な疾患ではあるが, 腎不全患者の消化管出血に対して本疾患を常に念頭にいれる必要がある.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top