日本透析医学会雑誌
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重曹粉末への混入物, エルカ酸アミドおよびオレイン酸アミドについて
鈴木 祥史北村 文則山田 正和小泉 博史
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1995 年 28 巻 7 号 p. 1055-1062

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抄録

重曹粉末用ポリエチレン袋に添加されている粘着防止剤, エルカ酸アミドおよびオレイン酸アミド (両アミド) が透析液中へ混入していることが判明した. その混入経路と両アミドの人体への影響を調査, 検討した.
両アミドの混入を知り得る契機となったのは, 重曹自動溶解装置の使用開始より3か月程度経過した時点で, 貯留槽電導度計の表示が経時的に低下し始めたことによる. 装置内の点検で貯留槽系の各部位に油状物質の沈着を認めた. 貯留槽電導度計表示低下の原因は, 油状物質の電極への沈着によるものであった. 沈着物質は赤外線吸収分析によりエルカ酸アミドと同定された. さらに, ポリエチレン袋と重曹粉末を, 各々エチルアルコールで抽出し, 得られた物質をガスクロマトグラフィー-マススペクトロメトリーで分析した結果, 両抽出物ともエルカ酸アミドとオレイン酸アミドの混合物と同定された.
保存中に, ポリエチレン袋より重曹粉末中へ両アミドが分散移行し, 重曹粉末溶解時に透析液中へ混入していると思われる. 両アミドの重曹粉末中への移行量は0.4ppmと測定された. エルカ酸アミドとオレイン酸アミドの分子量は各々338および281 daltonで, 透析施行中に透析膜を介して血液中への移行の可能性も考えられた. 現在のところ, 両アミドの人体への安全性や毒性については十分に調査されていないが, 今後, 両アミドの血液中移行量の調査と人体への長期的影響の検討が必要と思われた. 両アミドはポリエチレン袋より重曹粉末中へ分散移行し, 透析液中へ混入したが, 他の透析資材についても, 同様の混入現象を考慮した安全性の検討が必要と思われた.

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