日本透析医学会雑誌
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CAPD患者に合併した虚血性回腸壊死の1例
金子 卓司佐藤 滋佐々木 英夫大森 聡杉村 淳藤澤 宏光阿部 俊和工藤 卓次清野 耕治藤岡 知昭久保 隆
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1995 年 28 巻 7 号 p. 1087-1093

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抄録

CAPD施行中の患者において急性上腸間膜動脈虚血による回腸壊死の1例を経験した. 症例73歳, 男性. 1989年12月よりCAPD導入. 1993年4月5日, 食欲不振, 透析液排液の沈渣検鏡でWBC 15-20/400×1視野 (1 HPF), CAPDカテーテル出口部からの膿汁の流出を認め, 腹痛の訴えはなかったが急性細菌性腹膜炎の疑いで入院した. 透析液バッグ内に抗生剤を注入しCAPDを行ったが, 25日間の入院中, 排液の沈渣検鏡でWBCは20/1HPFを上限として常に存在した. 白血球数は10,000/mm3前後を維持していたが, CRPは陰性であり, 腹痛や発熱を一度も認めなかった. 4月29日退院, その翌日の夜より腹痛が出現し徐々に増強したため, 5月3日当院救急外来を受診, 急性細菌性腹膜炎再燃の疑いで再入院した. 体重は退院時の52.0kgから45.0kgと極度に減少し, 血圧106/60, 体温36.0°C, 腹部全体に圧痛を認めたが, 筋性防御は認められなかった. CAPDカテーテル出口部からの膿汁の流出を認め, 白血球数22,300/mm3, CRP 23.1mg/dl, 赤血球沈降速度1時間値79mm, 2時間値118mm, CAPD排液の沈渣検鏡でWBCは10-15/1HPFと退院時と同じであった. 急性細菌性腹膜炎の再燃として透析液バッグ内に抗生剤を注入しCAPDを続行したが, 再入院8日後の5月11日の排液に糞便が混入したため, 消化管穿孔の診断にて緊急開腹術を施行した. 回腸末端より約4cm口側から10cmにわたる回腸の壊死を認め, 壊死回腸を切除, 回腸盲腸吻合術ならびにCAPDカテーテル抜去術を施行したが, 術後14日目に死亡した. カテーテル抜去時, トンネル感染の所見はなかった. 急性の臨床経過および病理組織学所見に加え, 心房細動があり循環血液量の低下による低血圧状態にあったことから, 上腸間膜動脈虚血による回腸壊死と考えられた.

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