1996 年 29 巻 12 号 p. 1523-1527
血液透析を受けている慢性腎不全患者で, 尿細胞診検査を3回施行できた220例を対象として, 透析患者における尿細胞診検査の意義について検討した. 患者の年齢は22-82歳 (平均58.3歳) で, 男性131例, 女性89例であり, 透析歴は12-8,428日 (平均1,238日) であった. 原疾患は慢性糸球体腎症が152例, 糖尿病性腎症が38例, 嚢胞腎が8例, 腎硬化症が6例, ループス腎炎が2例, その他が6例で, 不明が8例であった. 220例の660回の尿細胞診の結果は, class Iが490回, class IIが157回, class IIIが11回, class IVが1回, class Vが1回であった. class Vの症例において膀胱鏡検査にて膀胱腫瘍を認め, 生検にて移行上皮癌のgrade 3であった. class IVの症例では, 膀胱鏡検査や尿管鏡検査にて, 明らかな病変を認めなかった. 尿細胞診検査は透析患者の尿路腫瘍のスクリーニングとして非侵襲的であり, 繰り返して検査ができ, 有用であると考えられた.