日本透析医学会雑誌
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他覚的神経症状を欠き脊髄腫瘍の診断が困難であった維持透析患者の1手術例
堀井 昭工藤 清士坂本 吉成斎藤 直美森谷 洋子王 東松本 守雄西村 正智市原 真仁
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1996 年 29 巻 3 号 p. 225-229

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抄録

症例は血液透析歴6年の54歳女性. 1992年12月右下肢痛が出現. 右鼠径部以下の疼痛, しびれ感以外他覚的な神経症状に欠けており, また胸腰椎の単純撮影上特記すべき所見なく, 鎮痛剤で治療された. しかし, 痛みは次第に増強し, 1994年9月疼痛のため歩行困難となり入院となる. myelographyにて硬膜内髄外腫瘍の像を呈し, CT, MRIにてL1椎体上縁-L2椎体上縁に脊髄前方に局在する2×3cmの腫瘍を認めた. 腫瘍摘出術および椎弓切除術を施行し, 病理学的に神経鞘腫の診断を得た. 手術後約1週間で右下肢の疼痛はほぼ消失し患者は歩行にて退院した.
慢性維持透析患者においては, 骨カルシウム代謝異常などのため, 疼痛を訴えることが多い. 維持透析患者では, 疼痛の原因はさまざまだが, 原因不明の疼痛の鑑別診断の一つに脊髄腫瘍も考慮されるべきと思われる.

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