日本透析医学会雑誌
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阪神・淡路大震災により発生した, I型マクロcreatine kinase (CK) 血症を伴ったcrush syndromeの3例
田中 敬雄宮脇 尚史笠原 正登八幡 兼成橋本 英隆菅原 照上田 恵松尾 孝彦桑原 隆
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1996 年 29 巻 3 号 p. 241-248

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抄録

我々は阪神・淡路大震災によるcrush syndromeの3例を経験した. 3症例とも男性で, 年齢は36歳から46歳であり, 高窒素血症, 横紋筋融解症, 乏尿で入院となった. 入院時, 3症例ともバイタルサインに特に異常を認めず, またX線上, 明らかな骨折はみられなかった. crush syndromeと診断し, 血液濾過 (HF) を開始した. ダイアライザーはPNF-17DX (膜面積1.7m2, PAN膜), 置換液はサブラットAを15-20l, 抗凝固剤は, nafamostat mesilateを30-50mg/h使用した. 当初, 3例とも連日3日間施行したが, 血液濾過中に気分不良, 吐き気, 血圧低下を2例に認めたため, 酢酸不耐症と考え, 血液透析 (HD) に変更した. ダイアライザーはBK-1.6U (膜面積1.6m2, PMMA膜), 透析液はキンダリーAF2, 抗凝固剤は, nafamostat mesilateを30-50mg/h使用した. 第1例はHF 4回, HD 7回, 計11回, 第2, 3例はHF 5回, HD 12回, 計17回施行後, 離脱した. なお3症例とも, 酵素免疫固定法によりIgG, IgA, κ, λと結合したcreatine kinase (CK) の存在が認められ, いわゆるI型マクロCK血症を合併していた. この免疫グロブリンと結合したマクロCKは病状の回復とともに消失した. crush syndromeの際, マクロCK血症を合併した報告はいままでになく, 興味ある症例と思われたので, crush syndromeの病態, 治療も含めて若干の文献的考察を行った.

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