1996 年 29 巻 4 号 p. 285-289
腎不全患者においては, 透析治療では有効に除去されないフェノール, パラクレゾールおよびインジカンが著明に蓄積しているが, これらの尿毒素は腸内腐敗産物由来である.
今回, 腸内フローラの検索と糞便中の腐敗産物の測定を行ったところ, 好気性菌に富んだ透析患者の乱れた腸内フローラが, 乳酸菌製剤ロロン®Sを投与することにより改善するとともに, この腸内フローラの改善に伴いフェノール, パラクレゾール, インドールおよびスカトールといった腐敗産物の産生が抑制されることが判明した. このことは, 延いては尿毒素の蓄積を抑制することにもつながる.
本研究では, “probiotics” の概念に立脚して乳酸菌製剤ロロン®Sの投与を行ったが, 今後の腎不全のケアの一つの手段として非常に有望と思われる.