日本透析医学会雑誌
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透析患者の精神的側面についての考察I
CMI・SDS・STAIを用いた横断的研究
田中 和宏森本 修充大橋 雪英下山 節子保利 敬藤見 惺
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1996 年 29 巻 6 号 p. 1057-1066

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抄録

腎不全による透析患者65例の全般的な精神健康度を, STAI, CMI, SDSを用いて, 調査を行い, 特徴的な所見を得た. CMIでは, 半数以上がneurotic, subneuroticレベルにあると判定され, この多くは, 精神的自覚症よりも身体的自覚症の肯定反応率が高かった. CMIから判定される精神的問題では, 抑うつ, 希望のなさなどが目立ったが, その中でも易怒性が多いのが特徴的であった. STAIから判定される不安は, 不安になりやすさの傾向すなわち特性不安, 透析中の不安をあらわす状態不安ともに平均的には高い値を示した. 状態不安, 特性不安を個々に見てみると, 全般に状態不安すなわち透析中の不安が減じている可能性がある. SDSから判定される抑うつ傾向では, 約2/3に何らかの抑うつ傾向が認められた.
また, 透析年数が増すにつれて一般的な精神健康度が安定してくるとの報告が見られるが, 本研究ではむしろ透析年数が増すにつれて精神的自覚症, 身体的自覚症, 精神的問題などが増加する傾向が認められた.
易怒性といった否定的な感情は内在化されている可能性があり, 患者の内面にある怒りや過敏といった感情にも十分配慮しながら透析治療を続けていく必要がある.

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